修行バカの懺悔道

自分の過去の生き様に反省し、死ぬまで懺悔して生きようと心に決めたら、そこに幸せがあった。 なんだか懺悔しきれないのである。

『妻がいきなりに豹変してしまった・・・』

私は、もう長い間、心霊相談という下世話なボランティアをしているのですが
このボランティア活動というものは、本当に自分自身を成長させてくれるモノだと思っています。

誰か、何かの為に無償で尽くすという行為は
『そうしたい!』と思う事すらままならず
また、そうする事で何かの犠牲を生み出してしまいます。
そっちで良くても、こっちで迷惑をかけてしまったり
結局は独りよがりの行為だったりしてしまう事もあります。


もう、10年以上前の出来事ですが
知人の伝手で、とある相談を受けました。

『妻がいきなり急変してしまいおかしくなってしまったのです。
病院に行きましたが、何ともならないのです。
どうか、助けて頂けないでしょうか』
という内容でした。

お話をお伺いする限りでは
何かに憑依されているだけだと思い
『大丈夫です、ご安心ください。夕方以降にお伺いしますので
向かう時にでも、もう一度ご連絡します。』
とだけ、とりあえず伝え電話を切りました。

私は、普段は仕事をしているので、仕事が終わってからでしか
出向く事ができないのです。
その時は、車で1時間半の場所まで行かなければなりませんでした。

ご主人から電話を頂いた時は、そんなに深刻な問題ではないと思ったのですが
道中、現場に近づくにつれて、これはただ事ではないと感じました。

現場に着くと、ご主人に案内され
奥様のいる部屋に通されました。

奥様は、天井の隅っこを見つめながら
何かブツブツつぶやいていました。
目を見ると眼球の焦点は合っておらず、完全にいっちゃってる感じです。

ご主人いわく昨日の昼間、いきなり悲鳴をあげてから
ずっと、この状態になっているそうで
見るからに何かに憑依されている状態でした。

私自身、憑依体験は何度もあるので
そんなに驚くような状態ではなかったのですが
問題は、この症状を引き起こしている原因なのです。

観れば観るほど・・・厄介な状態で
私と同じ状態にしか、観えませんでした。

とりあえず、憑依状態から正気に元に戻しましたが
私と同じ状態なら、何度もこの状態を繰り返すと思ったので
対処方法だけ、お伝えしておきました。

誰しも自分の現実は、自分で乗り越えるしかないのですが
あまりにも急な出来事ですし、自分で乗り越えろと言われても
そんな言葉に納得できるわけもないのです。


私も、そうだったのですが
初めて霊能者と呼ばれる方に相談した時に
同じように、自分で何とかしろと言われ
『なんだ所詮、この程度の霊能者か!』くらいに思ったものです。

たぶん、同じように思っているだろうなぁ~と思いつつ
何かあったらいつでも電話するように伝えて、その日は戻りました。



そして、翌日を越えた深夜、丑三つ時に電話がなりました。
『夜分にすみません!先日の○○です!
妻が!妻が大変なんです!包丁を持って暴れてるんです!
助けてください!どうか!お願いします!』
と、そんな電話をいただきました。
電話の向こうでは、奥様の叫び声が聞こえるのです。
ウギャ~!ワァ~!コロシテヤル~~!って感じです。

とりあえず、状態を把握してから
折り返しすぐ電話すると伝えていったん電話を切りました。

遠隔でどうにかなる状態でないのは、体験上良くわかっていたので
その時、私の頭を過ぎったのは、翌日の仕事です。

翌朝、早くに出発して大事な商談があったのです。
どうしても取りたい仕事だったので
何日も前から情報収集し、資料をつくった大事な商談でした。

当然、片道1時間半もかけていく距離に出向いていれば
寝る時間はなくなってしまい、そんな状態で商談に行かなければなりません。

仕事が終わってから行くようにしようと、
そう決意した瞬間!

『皆様のお役に立てる事が私の幸せ』だと口にしている
自分の姿が頭をよぎったのです。

普段からしている、このボランティア活動は
皆様のお役に立ちたいからしている事だと
自分でもそう思っていました。
そして、その思いになんの違いもない!と
そんな強い自負があった活動なのに・・
今、正に自分の仕事を優先しているわけです。

そして、次に・・
『ケッ!なんだよ!結局、自分がかわいいだけじゃん!』
『どこにも相談できずに助けを求めてきているのに放置か?信じれん!』
『誰かの幸せなんか、これポッチも願ってないじゃん!』
『1円にもならないから行かないんだろ!結局は金だろ!?』
『綺麗ごとばかり口にして偉そうに!やっぱ俺って最低だよ!』
と、自分の思考は、自分に対してそう思うわけです。


片道1時間半・・・
往復3時間・・・
1~2時間いたとして・・
ん~・・戻ったら7時頃かぁ~
どうして・・仕事間に合っちゃうかなぁ~・・・
と、思いながら電話をしました。
『これからお伺いするので、1時間半くらいかかりますがお待ちください。』と。


現場に着くと、家の奥から
『どうぞ上がってきてください!』というご主人の声が聞こえました。
お部屋まで行くと、奥様は布団にくるまれ押さえつけられた状態で
獣のようにウゥ~~と、唸っていました。


とりあえず、憑依現象を取り除く事で奥様は正気を取り戻し
普通に会話できるようになり
ご主は、涙を流しながら何度も何度も
『ありがとうごいざました。』とお礼を言って下さいました。

私がした事は、憑き物を体内から取り除いただけなので
コレと言って大した事をしたわけではないのです。

こんな程度の事で、ここまで感謝されるなんて思っていなかったので
仕事を差し置いてまで、来て良かったと、心からそう感じた事を記憶しています。
そして、この先も相談奉仕を続けて行こうと、そう我に誓った瞬間でもあります。

実際に、心の奥底から強い感謝のエネルギーをもらう体験をしないと
分からない事だとは思いますが
私にとって、人生観を変えるほど大きなモノを頂く事ができたのです。


現場に着くまでの道中は
『はぁ~・・・俺って何してるのかなぁ~・・アホちゃう?』
なんて、思っていたのですが不思議なもので
帰りの道中では
『来て良かった!この先もっと沢山の人の力になれるよう努力しよう!』
なんて思っているわけです。

そして、私を頼ってくださったご夫婦に心から感謝している自分がありました。
なんとも言えない至福のひと時です。


ボランティア活動は、する側が救われるんだ!と
その時、強くそう思った事を記憶しています。


その時、どんな出来事も感謝すべき事しか起きていない・・と
私が、尊敬するジジイが言っていた言葉を思い出しました。